「AIによる採用は差別を生む」という懸念は、抽象的な不安ではなく、実際の事例から生まれています。過去には大手企業がAI採用ツールを廃止した例もあります。性別による偏りが判明したためです。
過去の採用データを学習させると、そのデータに含まれる過去の偏りをそのまま再現してしまいます。「AIだから公平」は、成立しません。では、どうすれば公平に近づけるのか。本記事で整理します。
一方で、人間の面接にも偏りがある
公平さを考えるとき、比較対象は「完全に公平な選考」ではありません。人間の面接にも、無視できない偏りがあります。
- 面接官によって評価がばらつく(弊社受験者アンケートでも「面接官ガチャがなくなって安心」という声がありました)
- 第一印象や相性による判断が入りやすい
つまり問われているのは「AIと人間のどちらが公平か」ではなく、「どうすれば公平に近づけるか」です。仕組みで偏りを抑える設計が鍵になります。
公正な採用選考の原則
厚生労働省は「公正な採用選考の基本」を定めています。これはAI面接でも同じように適用される原則です。
本人に責任のない事項を把握しない
本籍・出生地、家族の職業や収入、住宅状況など、本人の努力では変えられない事項を採用選考の材料にしないという原則です。
本来自由であるべき事項を把握しない
思想・信条、宗教、支持政党、人生観など、本来自由であるべき事項を選考で問わないという原則です。AI面接でも同じ原則が適用されます。
AI面接で差別を生まないための設計
評価項目を業務に必要な能力に限定する
評価するのは、その仕事を遂行するために本当に必要な能力だけにします。業務と無関係な項目は、そもそも評価基準に含めません。
顔や外見にもとづく評価項目を設けない
顔立ちや外見は、客観的な判定基準を定義できないため評価に用いません。見た目で点数が変わる仕組みは、差別につながります。
要配慮属性を評価の材料にしない
介護・育児・傷病・信条などの要配慮属性は、評価の材料にしません。業務遂行能力とは切り離して扱います。
出力に要配慮属性が混入していないか検査する
評価レポートの出力に、要配慮属性が含まれていないかを検査する仕組みを持ちます。混入していれば取り除く運用が必要です。
「配慮の申し出」の扱い方
候補者から、欠勤の可能性について事由とともに申し出があることがあります。介護・育児・通院などの事由です。この扱いには注意が必要です。
- 事由(介護・育児・通院など)そのものは、判定に使わない
- 記録するのは、業務要件ベースの事実のみ(勤務可能時間など)
事由を判定材料にすると、育児介護休業法の不利益取扱いに該当するリスクがあります。「勤務可能な時間帯」という業務要件に翻訳して扱うことが重要です。
規制の動向
AI規則で採用領域のAIを「高リスク」に分類し、人間による監督を要求しています。透明性と説明可能性が強く求められる方向です。
カリフォルニア州では、自動意思決定システムの事前通知義務が2026年に施行されます。候補者にAIの利用を知らせることが求められます。
2026年の個人情報保護法改正で、生体情報(顔認証・声紋等)の規律が新設され、課徴金制度も導入されます。透明性と人間の関与を求める流れです。
各国の規制はいずれも「透明性」と「人間の関与」を求める方向に進んでいます。評価の根拠を記録し、最終判断を人間が行う設計にしておけば、規制の変化にも対応しやすくなります。
企業が確認すべきこと
- 1評価項目に、業務と無関係なものが含まれていないか
- 2最終判断を人間が行う設計になっているか
- 3判定の根拠を記録・確認できるか
- 4サービス提供者が法令対応の体制を持っているか
まとめ
AIは、放置すれば過去の偏りを再現します。しかし業務に必要な能力だけを評価項目に限定し、要配慮属性を材料にせず、最終判断を人間が行う設計にすれば、人間だけの面接よりも公平に近づけることができます。
大切なのは「AIだから公平」でも「AIだから危険」でもなく、公平に近づけるための設計を持つことです。
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